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  2. 福間師範 日常茶飯事 第六話

2017年夏号和風・掲載

 目まぐるしく時間は過ぎていきますが、平成二十九年も始まってもう五月、夏がやって来ました。茶室も夏に模様替えをしていきます。

〇炉から風炉へ
 十一月よりお世話になった炉の灰を上げていきます。炉の周りに灰を落とさないために養生をして底取で少しずつ丁寧に上げていきます。この時に炉壇を傷つけないように十分気をつけましょう。ある程度炉を上げると次に五徳を取ります。五徳はたわしなどを使って熱湯できれいに灰を取り除いてからかわかします。湿気を呼ぶため炉の中の灰は完全に上げます。上げた炉の灰はカメのような容器に入れておきます。
 次に畳を風炉用の一枚畳に入れ替えていきます。和風堂では六箇所の畳を入れ替えるので大変です。炉の部分だけの畳を入れ替える場合もあります。「炉の後に一畳青しほととぎす」と言われるように一枚の畳だけが青々しい風情は、風炉の季節が来たなと気分が一新した気がします。

〇灰型上達のコツは回数
 次に風炉・釜を出して私も苦手な灰型を押していきます。灰型については以前の『和風』にも紹介されているので省略いたします。風炉の灰型は苦手という人が多いと思いますが、灰型が押せないとお客様をお招きできません。以前和風堂で灰型の上手な望月師範代にうかがいますと「やはり回数でしょうか」と言われました。私も灰を押す回数が増えると少しずつ分かったことがありますのでお知らせしましょう。
 一 使う灰をまずとおしを通して使う。
   ・粒子が均等になるのでしょうか。押しやすい気がします。
 二 風炉の中に均等に灰を入れていく。
   ・灰を押す時、楽に押せますし、仕上がりが美しくなります。
 三 時間を決めて押す。
   ・灰は押せば押すほど堅くなってしまいます。ふわっとした感じが大切ですし、堅い灰では火の起こりに問題があります。
 四 灰を均等に入れたら筆や灰匙を使ってあらかじめ大まかな型を使ってみる。
 五 最後に風炉の内側のきわ、五徳についた灰を筆などを使って落とすと仕上がりが美しく見える。
 いずれにしましても初めはうまくいきません。が、それでやめては上達しません。とにかく灰型を押す機会があればチャレンジしてみましょう(たとえば先生の稽古場の灰型を押さえさせていただくとか)。自分で灰型を押した風炉で炭手前をして火が上手に起こった時の感激は押さない人には分からないと思います。風炉炭手前の客作法の中で、風炉中の拝見が終わって客は炭の入れ方をほめるのではなくて、灰型をほめると学ばれたと思います。風炉の灰型を押し終えると小板を定位置に置き、その上に風炉を据えます。
 次に風炉用の物を準備していきましょう。柄杓・香合(焼物から塗物)・香(練香から香木)・花入(籠を使うこともできます)・竹蓋置(中節から天節)・炭(風炉用の寸法の炭)・灰(湿し灰から風炉用の灰)などたくさんのことをしてお客様をもてなすわけです。
 迎付が済み、お客様は露地の風情をゆっくりと拝見しながら蹲踞を使って、手、口を清めて茶室へ入席します。お客様が全員席入が済まれ着座されたら茶道口を開けて一礼してお席に入り上客よりそれぞれお客様に挨拶をします。現在は大寄の茶会が多いため、次客が「ご一緒に」と言われることが多々ありますが、茶事の場合には一人ひとりにご挨拶されるほうが良いと思います。

〇亭主・半東・料理担当は三位一体で
 挨拶が終わると「お炭を通させていただきます」と言って水屋に出てから茶道口を閉めます。亭主は水屋に帰り、料理担当の方に状況を確認しておきます。茶事は亭主・半東・料理をする人が三位一体で運営していくものですから、亭主はそれぞれに確認し、席中の進行状況を他の人に伝えることも大切です。炭斗、香合、灰器などを席中に持ち出して炭手前をします。料理担当の方に言う目安として『賓主録』には次のように記してあります。
 一 ご飯はお客様がそろわれる頃に炊きはじめる。
 二 味噌汁は炭手前が始まる頃からあたためる。
 三 煮物椀は膳を出してからあたためる。
 四 小吸物(箸洗)は亭主相伴の間にあたためる。
 料理の進行、献立をあらかじめ台所にはって分かりやすくしておくと良いと思います。
 香合の拝見が終わり、亭主は香合を取りに出ます。この時に料理の方に必ず「香合を取りに出ます」と忘れずに言ってください。香合を取り茶道口に座り、「時分刻ですので粗飯を差し上げます」と言って茶道口を閉めます。料理の準備がととのっていたらすぐに配膳をします。熱い物は熱いうちに出すと言うように、冷めた物をお出ししないように気をつけましょう。配膳が済みましたら「どうぞお箸をお取りください」と言って茶道口を閉めます。これから後は『茶道上田宗箇流(初級編)』をご覧ください。

〇いつも自分が懐石で気をつけていることを少々
 一 最初に出すお酒の銚子は、お味噌汁を飲まれ終わった頃に持ち出す。
   各々につぎ終わった銚子は末客に預けるか、お酒の量が少ない場合はあらためて酒を入れて持ち出しておく。
 二 汁替・盃事は少し難しいので『初級編』をよく読んで理解してください。
 三 最近の茶事では相伴の時間が短いことが多いので気をつけましょう。相伴とは亭主が同じ献立をいただく時間です。お客様のほうも茶事の話をしながらゆっくりと懐石をいただくことに気をつけましょう。
 四 相伴が終わり茶道口を開け、茶道口に返された器を取り入れてから亭主は「お料理のお加減はいかがでございましたか」と挨拶をします。ま
   た、懐石が終わり膳を上げる前に茶道口を開け「お粗末でした」と挨拶をして茶道口に置いてある器を取り入れます。
 亭主は湯桶を出し終わったら自ら露地へ水を打ちます(半東がいたら半東に水を打つように指示します)。その折に蹲踞の水を足すことを忘れないようにしましょう。また、莨盆の火入の炭を入れ替え、灰吹をあらためておきます(冬ならば手焙の炭も入れ替えておきます)。ただしお客様が少人数の場合、前記の準備がすべてできないことがあります。その場合はお客様が主菓子を召し上がっている時間と二つに分けてされることも良いと思います。茶事の亭主の仕事は大変です。


一文字灰

唐物写籠花入に
額紫陽花と撫子を入れて初夏らしく

蹲踞で手と口を清めて茶席へ入ります

茶事の場合、ご挨拶は一人ひとりに

蹲踞に水を足すことを忘れないように