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  2. 福間師範 日常茶飯事 第四話

2016年冬号和風・掲載

 いつもお弟子さんの稽古を拝見していると思うことがあります。お点前の稽古の最終目的は何なのでしょうか。茶事をしてお客様をもてなすことだと思うのですが、稽古が点前のための稽古だけになっているような気がします。
 私は、ある方の部屋を間借りして稽古をさせていただいています。男性ばかりが十名ほど来られていますが、その家主の方がいつも食べるものを作ってくださいます。先日もボテボテ茶をいただきました。そのお宅のボテボテ茶は、お茶の中に赤飯や野菜の煮しめ、漬物など具だくさんで、男性達は稽古そっちのけで食べていました。これが本来のもてなしではないでしょうか。
 さて今回は、茶事の案内が届いてから当日までの客作法について説明していきましょう。

【茶事の案内が届いたら】
 まず返書を手紙にて亭主にすぐに返信します。内容としては通常の手紙と同様に、季節の挨拶、茶事に招かれた御礼、それに加えて「遅参せぬよう必ず参上いたします」という文面を書かれるとよいと思います。
 『賓主録』には、二通のことが書かれています。
 一 廻章にて申来る時ハ、点を掛、名の下へ恭以参礼可申と書へし
 一 一名にて書状来る時ハ、子細なく恭由返書可致也、必口上ニて返答不可致候事
 前号に紹介した通り、昔は廻章といって一通の手紙を連客に届ける案内状があったようです。廻章の案内状が届いたら自分の名前の下に「必ず参上いたします。御礼を申し上げます」と書き添えるとあります。
 また、現在のようにお客様それぞれに案内状が届いたら、返書をしたためる、必ずお会いして申し上げなくて良いとあります。

【前礼にうかがいましょう】
 茶事の開催される前日に亭主の宅へ行き、ご挨拶をすることを前礼といいます。前礼は必ず玄関先で済ませます。亭主は翌日の茶事の準備で大変ですから客もそれを察して玄関先で済ませるわけです。お客様同士打ち合わせて誰か代表が前礼をされてもよいと思います。前礼は、自宅から亭主宅までの交通手段や所要時間などを調べるのにも役立ちます。
 『賓主録』には、
 一 前後礼共に必参るへし、前礼にハ取次まて申入置、後礼にハ対応いたし、前日の礼厚申へし
 一 同輩以下ヘハ、前後の礼共に書状ニても苦しからす
 (一 前礼、後礼は必ず行きます。前礼は取次の人にご挨拶をし、後礼には亭主に会って茶事の御礼を深く申し上げます)
 (一 友人やそれより若い人達には、前礼、後礼を手紙にして申し上げてもよい)
とあります。『賓主録』の書かれた江戸時代には身分制度があり後者のようなこともありましたが、現在では必ず亭主宅へうかがった方がよいと思います。

【準備するもの】
 茶事に参加する場合、用意するものに次のものがあります。
  扇子、帛紗、敷帛紗、懐紙、八ツ切紙、替足袋、手拭、鼻紙(現在ではティッシュペーパーのようなもの)、香(志野袋)
 また、『賓主録』には気をつけることも書いてあります。
 一 薫かけ仕たる衣服、着用致へからす にほひ物入たるたはこ、無用
 一 下ケ物無用、革類無用
 「香で薫をつけた衣服を着用してはいけません。たばこも必要ありません。印籠などの類は必要ありません」とあります。現在でいうと、きつい香のする整髪料や香水をつけてはいけません、時計や宝石のような貴金属類も身に着けてはいけません、という意味だと思います。

【茶事へ参加する心得】
 茶事の当日は案内時間より少し早く行きます。およそ二十分~十五分くらい前に着くことがよいと思われます。玄関先に打ち水がされ、玄関が手がかりだけ開いていることが合図となります。
 『賓主録』には
 一 髪結、湯あひ、口漱、身を清浄に致参へし
 一 亭主、初心なれハ、格別早参るも主人の心さわかしく成故、考在へき事也
(一 整髪、風呂へ入り、口を清め身を清めて参ります)
 (一 経験の浅い亭主が茶事をする折、あまり早く行くことは亭主が動揺するのでよく考えましょう)
 宗冏家元の継承茶事の折、他流のある茶人が招かれました。この茶人は京都の方で、少し早く和風堂へ着かれたのでしょう。タクシーで到着されたのですが、到着した気配を感じさせないために和風堂から少し離れた所で降りて歩いて来られました。私は水屋を務めていたのですが、それを後で聞いて驚いたことを思い出します。
 次回は亭主の茶事の水屋仕事についてお話したいと思います。
 どなたかお茶事に招いていただけませんか。


返事の手紙には「必ず参ります」という文面を書きます。

前礼は玄関先で済ませます。

茶会に参加する時の準備物。

打ち水がされ、玄関が少し開いていることが入ってよいという合図です。